M.A.C Garden top 春 Spring 秋 Autumn 冬 Winter 外伝 Another story
名前
橘(たちばな)
学名
Citrus tachibana
分類詳細
双子葉植物離弁花 常緑小高木 
ミカン科
4〜5月
6〜11月
2〜4m
 京都御所の紫宸殿の前庭に「左近の桜、右近の橘」があるように、タチバナは古い時代から観賞木とされ、花橘と古歌に詠まれた。
 また、タチバナの実は、右の万葉集の聖武天皇の歌や、日本書紀の巻六の、

九十年春二月庚子朔、天皇命田道間守、遣常世國、令求非時香菓。香菓、此云箇倶能未。今謂橘是也。
90年春2月1日、垂仁天皇は田道間守(たじまもり)に命じて。常世国(とこよのくに)に遣わして、「非時の香果(ときじくのかぐのみ)」を求められた。いま橘というのはこれである。

 という文章からわかるように果物として食用とされたようだが、橘が今の橘と同類のものかどうかは疑わしい。橘の実は酸っぱくて食用には向かないからである。
 そこで、古代に橘と称したのは、実は紀州蜜柑(一名コミカン)ではないかと言われている。
 橘の 香をなつかしみ ほととぎす 花散る里を たづねてぞとふ (昔を思い出させる橘の香りが懐かしいので ほととぎす〔わたし〕は 橘の花が散る邸を探して訪ねてきたのです)           
[花散里]
 箱のふたに盛ってある果物の中に、橘の実があるのをもてあそばれて、

「橘の かをりし袖に よそふれば かはれる身とも おもほえぬかな
(昔の人をしのばせる橘の香り あなたを昔懐かしい母君と思ってみると とても別人とは思えない)

 母君のことがずっと心にかかって忘れられず、慰められることもなく過ごしてきた年月、こんなふうにあなたを拝見すると、夢ではないかと思われるのですが、夢だと思ってみても、どうしてもあなたへの想いを抑えることができません。こんなわたしを嫌だと思わないでください」  
 とおっしゃって、姫君の手を握られるので、姫君はこんなことは体験したことがないので、ひどく困惑なさるが、おっとりと構えていらっしゃる。
[胡蝶]
三澤憲治訳『真訳 源氏物語』から抜粋
橘は 実さへ花さへ その葉さへ 枝に霜置けど いや常葉の木
(橘は 実まで花まで その葉まで 枝に霜が置いても ますます栄える木だ)
聖武天皇(巻六―一〇〇九)
我がやどの 花橘は 散り過ぎて 玉に貫くべく 実になりにけり
(家の庭の 橘の花は 散ってしまって 五月の玉に通せるくらいに 実がなってし まった)
 大伴家持(巻八―一四八九)
白玉を 包みて遣らば あやめぐさ 花橘に 合へも貫くがね
(真珠を 包んで送ったら あやめ草や 花橘と一緒に通して 五月の玉にするだろう)
大伴家持(巻十八―四一〇二)
MACトップへ