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京都御所の紫宸殿の前庭に「左近の桜、右近の橘」があるように、タチバナは古い時代から観賞木とされ、花橘と古歌に詠まれた。
また、タチバナの実は、右の万葉集の聖武天皇の歌や、日本書紀の巻六の、
九十年春二月庚子朔、天皇命田道間守、遣常世國、令求非時香菓。香菓、此云箇倶能未。今謂橘是也。
90年春2月1日、垂仁天皇は田道間守(たじまもり)に命じて。常世国(とこよのくに)に遣わして、「非時の香果(ときじくのかぐのみ)」を求められた。いま橘というのはこれである。
という文章からわかるように果物として食用とされたようだが、橘が今の橘と同類のものかどうかは疑わしい。橘の実は酸っぱくて食用には向かないからである。
そこで、古代に橘と称したのは、実は紀州蜜柑(一名コミカン)ではないかと言われている。 |
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橘の 香をなつかしみ ほととぎす 花散る里を たづねてぞとふ
(昔を思い出させる橘の香りが懐かしいので ほととぎす〔わたし〕は 橘の花が散る邸を探して訪ねてきたのです)
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[花散里] |
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箱のふたに盛ってある果物の中に、橘の実があるのをもてあそばれて、
「橘の かをりし袖に よそふれば かはれる身とも おもほえぬかな
(昔の人をしのばせる橘の香り あなたを昔懐かしい母君と思ってみると とても別人とは思えない)
母君のことがずっと心にかかって忘れられず、慰められることもなく過ごしてきた年月、こんなふうにあなたを拝見すると、夢ではないかと思われるのですが、夢だと思ってみても、どうしてもあなたへの想いを抑えることができません。こんなわたしを嫌だと思わないでください」
とおっしゃって、姫君の手を握られるので、姫君はこんなことは体験したことがないので、ひどく困惑なさるが、おっとりと構えていらっしゃる。 |
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[胡蝶] |
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三澤憲治訳『真訳 源氏物語』から抜粋 |
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橘は 実さへ花さへ その葉さへ 枝に霜置けど いや常葉の木
(橘は 実まで花まで その葉まで 枝に霜が置いても ますます栄える木だ)
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聖武天皇(巻六―一〇〇九) |
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我がやどの 花橘は 散り過ぎて 玉に貫くべく 実になりにけり
(家の庭の 橘の花は 散ってしまって 五月の玉に通せるくらいに 実がなってし まった) |
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大伴家持(巻八―一四八九) |
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白玉を 包みて遣らば あやめぐさ 花橘に 合へも貫くがね
(真珠を 包んで送ったら あやめ草や 花橘と一緒に通して 五月の玉にするだろう) |
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大伴家持(巻十八―四一〇二) |
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