|
|
|
|
|
|
|
|
|
Lithospermum erythrorhizon |
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
后の昼の行啓(ぎょうけい)。
一の人の御ありき、春日詣で。葡萄染(えびぞめ)の織物。すべて何も何も、紫なるものはめでたくこそあれ。花も、糸も、紙も。庭に雪のあつく降り敷きたる。一の人。紫の花の中には、杜若(かきつばた)ぞすこしにくき。六位の宿直姿(とのいすがた)のをかしきも、紫のゆゑなり。『枕草子第84段』
妃の昼間の行啓。
摂政・関白の外出や、春日明神への参詣。葡萄染の織物。すべてなにもかも、紫色は立派だ。花も、糸も、紙もだ。庭に雪が厚く降り積もっている景色。摂政・関白。紫の花の中では、かきつばたが少し気に入らない。六位の宿直姿が趣があるのも、紫だからだ。
このように清少納言が讃えたように、紫色は古代、エジプト・ギリシャ・ローマ、中国、日本で高貴な色とされ、神道、仏教、キリスト教のいずれにおいても聖なる色と尊重されている。
『源氏物語』では、ヒロインを「紫の上」と命名し、紫を気品ある色としている。
右の万葉集の三番目の歌は、紫の根に椿の灰汁を用いて紫を染めたから、
「紫は灰さすものそ」
と詠っている。
このように紫は万葉集に登場するほど歴史は古く、奈良時代から江戸時代末期まで栽培されたが、明治時代以降、化学染料の普及で栽培が廃れ、現在では絶滅危惧種レッドデータブックIBに指定されている。
M.A.C Gardenでは、2015年に苗を求めて育てはじめ、2016年も見事に咲いたが、まだ種を蒔いての発芽には成功していない。 |
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
秋の夕べは、いっそう心の休まる時がなく、恋いこがれている藤壺の宮のことばかりを思いつめて、その縁のある子を無理やりにでも手に入れたい気持ちがつのるだろう。
「消えんそらなき(死ぬに死にきれない)」
と尼君が詠んだ夕べのことが思い出されて女の子が恋しいが、また一方では、
〈一緒に暮らしたら、見劣りがするかもしれない〉
とさすがに不安になられる。
手に摘みて いつしかも見む 紫の ねにかよひける 野辺の若草
(いつになったら手に摘んで見ることができるだろう あの紫草 藤壺の宮の根につながっている野辺の若草を) |
|
|
[若紫] |
|
|
三澤憲治訳『真訳 源氏物語』から抜粋 |
|
|
|
|
|
|
韓人の 衣染むといふ 紫の 心に染みて 思ほゆるかも
(韓人が 衣を染めるという 紫の色のように 心に染みて あなたのことが懐かし く思われます)
|
|
|
読人しらず(巻四―五六九) |
|
|
|
|
|
紫草の 根延ふ横野の 春野には 君をかけつつ うぐひす鳴くも
(紫草の 根を張る横野の 春野では あなたを思って うぐいすが鳴いています) |
|
|
読人しらず(巻十―一八二五) |
|
|
紫は 灰さすものそ 海石榴市の 八十のちまたに 逢へる児や誰
(紫染めには その灰をさす椿 椿市の 八十の辻道で 今逢っているあなたは誰ですか) |
|
|
読人しらず(巻十二―三一〇一) |
|
|
|
|
|
|
|
|
|