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アヤメは、菖蒲と書くのではなく、文目と書くのが正しい。
菖蒲と書くのはショウブで、ショウブはショウブ科に属し、アヤメとは別種の植物である。
アヤメは、その葉が並列して立っているから文目という。
アヤメとカキツバタ、ハナショウブはよく似ているが、見分け方は以下の通り。
アヤメ―日当たりの良い乾燥した草地に生え、高さは30〜60cm。開花時期は5月上中旬。花弁の根元に黄色の網目模様がある。葉は細く、葉脈は目立たない。
カキツバタ―湿地に生え、高さは50〜70cm。開花時期は5月中下旬。アヤメよりも濃い紫色の花で、花弁の根元に白い細長の模様がある。葉は幅広く、葉脈は目立たない。
ハナショウブ―主に湿地に生えるが、やや乾燥した土地でも生え、高さは80〜100cm。開花時期は5月下旬〜6月で、花の色や花の形はさまざまで、花弁の根元に黄色い細長の模様がある。葉の中央に葉脈がくっきりと見える。 |
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源氏の君は、五月五日には、馬場御殿に出かけられたついでに姫君の所に行かれた。
「どうでした。兵部卿宮は夜晩くまでいらっしゃいましたか。あまり親しくしないほうがいい。厄介なところがある方だからね。人の心を傷つけたり、過ちを犯さない人はなかなかいないものですよ」
などと、褒めたりけなしたりして忠告なさる様子は、いつまでも若々しく清らかに見える。艶も色合いもこぼれるほどに美しい袿に直衣をなにげなく重ねていらっしゃる取り合わせも、いったいどこから来た清らかさなのだろう。とてもこの世の人が染めあげたものとも思えないし、ふだんと同じ色の衣装の文目模様も、菖蒲の節句の今日は格別に新鮮に感じられ、趣ある衣服の薫りなども、
〈気がかりなことがなかったら、きっと素晴らしく感じるにちがいないお姿なのに〉
と姫君は思っていらっしゃる。 |
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[螢] |
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三澤憲治訳『真訳 源氏物語』から抜粋 |
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2年前、わたしが「源氏物語」の草木を育てているというので、懇意にしている園芸店の人から文目あやめ)をもらった。培養鉢に植えて、
〈来年の初夏には咲くだろう〉
と、のんきに構えていたが、どういうわけか初夏になっても花芽がつかない。葉が茂るだけだ。不審に思って、園芸店の人に尋ねたところ、
「うちも咲かない。庭に植えてあるアヤメは咲いたが、鉢植えは、どんなに大きな鉢に植えても咲かない」
ということだった。
〈どうしたら、ベランダでアヤメを咲かせることができるだろう?〉
ウェブや図書館の文献を調べたが、解答は見つからない。それで、
〈とにかく庭植えのような環境を作ればいい〉
と思い立ち、アヤメを鉢に植えるのではなく、木材で底の深い箱を作って、木が腐らないようにキシラデコールを塗り、たくさんの土に肥料を混ぜて、熊本から取り寄せたアヤメを三束入れ、今年になってから、何回か10リットルの液体肥料をやったところ、すべての株に花芽がついた。
以下の写真は、一週間前に、木箱から化粧鉢に移し替えたものである。
〈ベランダでもアヤメの花を咲かせることができる〉
わたしは大いに満足している。
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