THE WORLD OF THE DRAMA 演劇の世界
「演劇の世界」コンテンツ
トップ 公演履歴 深層の劇 劇音楽 小道具 夢見る本 演出日記 台本 戯曲解釈 俳優育成 DVD
三澤憲治の演出日記
◇俳優歴13年、演出歴20年の広島で活動する演出家、三澤憲治の演出日記 三澤憲治プロフィール
2017年
2015年
2014年
2013年
2012年
2011年
2010年
2009年
2008年
2007年
12月
11月
10月
9月
8月
7月
6月
5月
4月
3月
2月
1月
2006年
2007年11月5日(月)

 最近感動したこと! ロッキーズの松井稼頭央選手のエピソードは出色だった。
 ご存じのように松井選手は、渡米してから故障などもあって、内野の名手が球をまともに投げられないという大スランプに陥った。
 かれは今まで天性の感で器用にこなしていた面があって、プロの眼から見たら、正真正銘のスローイングの基本が身についていなかったらしい。
 そこでかれは、スローイングの基本を一から学び直すことをはじめた。日本から西武時代のコーチをわざわざ招き、マンツーマンでスローイングのときの手や足の位置、体のひねり等を矯正した。
 スローイングを繰り返す模様をあるテレビ番組で見たが、それはまさに殺気迫るもので、名手であってもこれだけの努力をするものかと大いに感動した。
 この松井選手の例でわかるように、人間壁にぶちあたったら基本に帰ることが大切である。
 わたしは俳優の基本は発声・発音にあると思っている。この発声・発音の基本がしっかりしていれば、俳優として存在できると思っている。
 だからわたしは、この発声・発音の基本テキストをみずからつくって、レッスン生に渡し、これをじぶんで反復練習するように指示している。
 テキストの内容は、
 
 @発声法
 A呼吸法
 B母音の練習
 C子音の練習
 D鼻濁音の練習
 E母音の無声化の練習
 F意味音声の練習
 
 であり、この七項目を会得すれば俳優としてのスタートラインに立てる。大いに活用してもらいたいものだ。
 最近、あるテレビ番組のナレーションを聞いて愕然としたことがある。その人はかつて演技派といわれた人であるが、ラ行音とサ行音が滅茶苦茶であることに気づいた。ラ行音にくると必ずつっかえ、サ行音にくると音が抜けてしまっているのだ。
 どうしてこの人は、ラ行音やサ行音が正確に発音できないのか?
 それは、
 
 @発音するときの舌の位置が正確でないから。
 A唇をひん曲げてしゃべるクセがあるから。
 Bテレビ出演にかまけて、日頃の鍛錬を怠っているから。
 
 原因はだいだいこの三つだろう。かつて名優といわれた人であっても、松井稼頭央選手のようにもう一度基本に立ちかえり、俳優としてのアイデンティティ(存在意義)を示してもらいたいものだ。今のままでは、老境の憐れみしか感じられない。
 今、広島のレッスン生は、太宰治の『走れメロス』を稽古中だが、この中にじつに語りが上手い女の子がいる。土井洋輝くんと同じ小学2年生だ。わたしとしては土井くんの良きライバルが育ってきてとても嬉しいが、土井くんもきっと嬉しいはずだ。
 なぜなら、良きライバルなくして前進はありえないからだ。
 こんなことを思っていたら、またまたN・A・C広島に幼児の素晴らしい逸材が4人も入ってきた。
 まさに仰天の幸せである。
MACトップへ