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三澤憲治の演出日記
◇俳優歴13年、演出歴30年の広島で活動する演出家、三澤憲治の演出日記 三澤憲治プロフィール
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2009年1月10日(土)

 新年から早いもので十日も経ってしまった。
 例年のごとく師走から新年にかけては多忙の毎日を過ごした。年の暮れからN・A・C広島のホームページリニューアルの制作に取りかかってアップし、新年からは営業用の「俳優・タレントカタログ」の制作に取りかかって、やっと昨日完成した。
 ご存じのように、ウェブのカラー設定(RGB)と印刷のカラー設定(CMYK)とは違うので、はじめからそのつもりで撮影された写真を選んで二通りに処理して保存しておけば、そんなに時間はかからないのだが、わたしはいわゆる
〈考えながら歩く〉
 タイプで、仕事はひとつずつこなしていく気性なので、二度手間が多く、思わぬ時間がかかってしまった。
 こういうデザインが主の仕事は際限がない。もっと凝ったこともしたかったが、これ以上凝ると容量オーバーでパンクするので、
〈まあこの程度の出来で勘弁してもらいたい〉
 と思っている。
 そんなわけで、年末から正月にかけてホームページとカタログの制作に没頭したので、『源氏物語』の現代語訳が予定より大幅に遅れてしまった。ほんとうなら今頃は、「野分」を訳していなければならないが、そこまでいくにはまだ相当の日数を要する。急がなければ・・・。
 正月にNHKで瀬戸内寂聴氏の『源氏物語』の特集を再放送していた。他人の作り上げた『源氏物語』なんて見たくもないが、ちょうどその時は、フォトショップで頭を使わない画像処理をしていたので、
「まあ、どんなことを話すか聴いてみるか」
 と、仕事をしながら拝聴した。番組は、原作に書いてあることを一般の視聴者にもわかりやすいようにとの配慮がしてあったので、いわゆる『源氏物語』のダイジェスト版でしかなく、『源氏物語』の深層に触れることはできなかった。
 ただわたしがびっくりしたことがある。
 それは瀬戸内氏が、
「作家というものはどうしても濡れ場が気になるし、そこを書きたいのよ」
 と語っていたことだ。実際瀬戸内氏は、光源氏と藤壺の密会の場を創作して、その濡れ場を書いたらしい。
 ご存じのように紫式部は『源氏物語』で濡れ場は書いていない。いやあえて書かなかったといったほうが正しい。紫式部は濡れ場の一部始終は書いてはいないが、例えば光源氏が六条御息所や、朧月夜や紫の上や藤壺などと、どういうセックスをしたかは、その行為の後の文章で想像できるように細かく書いているので、わたしなんか、
「濡れ場を書きたい」
 などとは夢にも思わなかったからだ。
 例えば『源氏物語』には、光源氏が六条御息所と一夜を共にしていながら、その別れの朝に朝顔の君を口説くところがある。この時の六条御息所と朝顔の君の光源氏に対する気持ちは細かく書きたいとは思うが、六条御息所とのセックスシーンなど書きたくもない。作家が書きたくなかったのだから、それを現代人が書くなんて、わたしに言わせれば原作を逸脱した愚の骨頂である。これは余談になるが、映画の『源氏物語 ―千年の恋―』でもやたらとセックスシーンが多く、女性がわざとらしい声をあげるので閉口したことがある。この映画は女性が光源氏を演じていたからなおさら違和感があったかもしれないが・・・。
 とにかくこの
「濡れ場を書きたい」
 という小説家の一言に新年早々大いに触発された。小説家と演劇人の感性の違いを思い知らされた。
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