M.A.C Garden top 春 Spring 夏 Summer 冬 Winter 外伝 Another story
名前
尾花(おばな)
別名
薄(すすき) 花芒・花薄(はなすすき)かや
学名
Miscanthus sinensis
分類詳細
イネ科 多年草
8〜10月
1〜1.5m
 観賞としては「尾花」というが、一般的には「芒・薄(すすき)」で通っている。
 右の万葉集の「はだすすき」は、「花ススキ」のことで、「尾花」の枕詞として使われている。
 「尾花」の名前は、ススキの花の形が動物の尾に似ていることに由来し、「花芒(はなすすき)」という名でも親しまれている。
 ススキの名前の由来は、「すくすく立つ木」からついたとも、神楽に用いる鳴り物用の木「鈴の木」のようだから「スズノキ」が「ススキ」になったとも言われている。ただし、ススキは木ではなく、イネ科の多年草だが・・・。
 ススキには、もう一つカヤという呼び名がある。そのカヤは、「刈り屋」の意味で、ススキを刈って屋根を葺くからカヤと呼ばれるようになったという。だが、カヤはススキだけを指すのではなく、「苅萱(カルカヤ)」「白茅(チガヤ)」などでも屋根を葺くから、屋根を葺くのに用いられる草の総称ともいえる。
 枯れそうな庭の植え込みの中に、尾花が、ほかの草より際立って手をさし出して招いているのが趣深く見えるうえに、まだ穂が出そろっていないのも、露を貫きとめながら、はかなそうに風になびいている様子など、ありふれた光景だが、夕風がやはり心にしみる季節である。

穂にいでぬ もの思ふらし しのすすき 招くたもとの 露しげくして
(密かに恋しているようだね あの薄のように手招きする袖を涙で濡らして)  

 宮は着なれた柔らかな袿の上に、直衣だけをお召しになって、琵琶を弾いていらっしゃる。黄鐘調の短い曲を、とてもしみじみと弾かれるので、中の君も琵琶には興味があるから、いつまでもすねてばかりもいられず、小さな几帳の端から、脇息に寄りかかってちょっと顔をのぞかせていらっしゃるお姿は、いつまでも見ていたいほどかわいらしい。

「秋はつる 野辺のけしきも しのすすき ほのめく風に つけてこそ知れ
(秋が果てるのも風に揺れる薄でわかるように わたしに飽きてしまわれたのも あなたのそぶりでわかります)                               
[宿木]
三澤憲治訳『真訳 源氏物語』から抜粋
はだすすき 尾花逆葺き 黒木もち 造れる室は 万代までに
(はだすすき 尾花を逆さに葺き 黒木で造った家は 万代までも栄えるだろう)
元正天皇(巻八―一六三七)
さ雄鹿の 入野のすすき 初尾花 いつしか妹が 手を枕かむ
(さ雄鹿の 入野のすすきの 初尾花のように初々しい子 いつになったらあの子の 手を枕にするのだろう)
 読人しらず(巻十―二二七七)
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