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名前
蝦蔓(えびづる)
学名
Vitis ficifolia var. lobata
分類詳細
ブドウ科 つる性の落葉木本
6~8月
5m
葡萄染
 エビヅルは、海老蔓の意味で、漢名は蘡薁(くさぶどう)である。古名は単に葡萄(えび)といい、葡萄染(えびぞめ)などに使用したが、後に葡萄(ぶどう)がその名を取り、蝦蔓(えびづる)と言われるようになった。
 エビヅルは山野に生える蔓性(つるせい)の落葉低木で、葉と対生して巻きひげが出て、ほかに絡む。葉は3~5つに裂けて、葉の裏面や葉柄・茎に白か赤褐色の毛が密生する。雌雄異株。夏、淡黄緑色の小花が密集して咲く。実は熟すと黒くなり、食べられる。
 紫の上は、葡萄染(えびぞめ)だろうか、色の濃い小袿(こうちき)に薄蘇芳の細長を着て、髪が裾にたまるほど豊かでゆったりとしていて、体もちょうどよい大きさで姿も申し分なく、あたりに艶やかな美しさが溢れているような感じで、花に喩えるなら桜だが、その桜よりも優れた雰囲気は格別である。  

 御賀の日には、舞の童たちは赤い白橡(しらつるばみ)の袍(ほう)に、葡萄染の下襲を着るはずだから、今日は、青色の袍に蘇芳襲(すおうがさね)を着て、楽人三十人は、今日は白襲を着ているが、東南の方の釣殿に続いている廊を演奏する場所にして、舞楽の人が築山の南の端から御前に出てくる時に、仙遊霞(せんゆうか)という曲を演奏し、雪がほんの少し花びらのように散るのは、春がすぐ近くにやってきているように思われ、梅の風情も美しくほころびかけている。          
[若菜下]
三澤憲治訳『真訳 源氏物語』から抜粋
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