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世阿弥 『東北』(とうぼく)
和泉式部伝説を主題にした世阿弥の『東北』 (鬘物) では、
@まず、ワキである旅僧が名乗りをあげ都へ上ろうとおもうという道行の目的をのべるところからはじまる。
Aつぎに前シテである里女 (式部の化身) があらわれて東北院の庭の梅が和泉式部が植えたものであることをワキに語る。
B〈間〉の場面において、梅を寝所にちかく植えてめでたいという和泉式部伝説がワキとアヒとの掛け合いの形で、由来譚として語られる。
Cつぎに後シテとして和泉式部の亡霊があらわれ、ワキとの掛け合いのうちに仏法の有難さを説き、往時をかえりみ、そして終幕で、栄華の夢から覚めたことを語りながら消える。
この構成の原型は、さまざまなヴァリェーションはあるが、鬘物段階にあるすべての能に共通している。
能が、劇的連環体を完全にたちきるのは、「安宅」や「夜討曾我」のような、いわゆる現在物においてである。
現在物という意味は、現在の、その時代の事件を主題にしているという意味ではなく、古典物語や説話や口承を主題にしながらも、それらの物語の人物たちを現在形で登場させることのできた劇のことをさしている。
この表出の段階にいたってついに、前シテと後シテは必要ではなくなり (なぜなら現在形だから) また〈間〉を必要としてはいない。各場面はそれぞれ構成の単位をなしながら、劇的時間は登場人物に背負われて進行する。
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