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三澤憲治の演出日記
◇俳優歴13年、演出歴30年の広島で活動する演出家、三澤憲治の演出日記 三澤憲治プロフィール
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2017年8月21日(月)

 一応1コース最後の抗がん剤治療が終わり、8月18日に退院した。
 数えてみれば、入退院を繰り返し69日も入院していたが、病院の環境が素晴らしく、ケイタイ片手に心置きなく仕事が出来たので長くは感じなかった。今後は通院治療をしながら癌の経過を見ていくことになる。
 さて、退院してM.A.C Gardenの草木を眺めていたら、わたしの退院を祝うかのような一大事が起こっていた。
 なんとなんと、桐に花芽がついている。



 園芸店の人に頼んで桐を手に入れたのは、2015年の初夏だったが、その園芸店の人からは、
「花が咲くのは5年後だろう」  
 と言われ、ある盆栽屋さんと話していたら、
「桐で花が咲いてるのを見たことがない」  
 と言われるし、文献を見たら、
「すべての桐に花が咲くわけではない」
 と書いてあったので、
〈花が咲くのを期待するのは、無謀な望みかな〉
 と思っていたので、花芽がついた喜びは、まさに死にかけていた人を生き返らす起死回生の喜びと言っていい。
〈ベランダで桐の花が見られるなんて〉
 余命一年と宣告されたのは、4月28日だから、桐だけは絶対に花を見ることができる。
 万歳、万歳、来年の春が楽しみだ。  

2017年8月10日(木)

 3回目の治療が終わり、20日間退院していて、なにをしていたかというと、『源氏物語』の草木を観察して余分な枝を剪定したり、弱っている草木に薬を噴射したり、懇意にしている園芸店と盆栽屋に行って、土や鉢を購入して植え替えたり、ススキとオギの成長が思わしくないので、
〈この時期、プロはどのくらいに育てているのだろう〉
 と、ひどく気になったので、鳥取と埼玉から再び購入した。送られて来たのを見ると、ススキはわたしが育てているのと丈は同じ、色はわたしが育てている方が鮮やかだ。オギは送られて来たほうが、丈が二倍近く高い。オギを去年から育てているが、ウェブにアップしないのは、オギと鉢の組み合わせがうまくいかなかったからだが、盆栽屋さんに、
〈これだ〉
 と思える鉢があったので、秋にはアップできると思う。
 鉢といえば失敗談がある。桃の白鳳を育てていて、最初は培養鉢で育てたので、ウェブでアップしているように見事な桃が実ったが、
〈培養鉢では美的センスがないな〉
 と思い、桃は中国原産だから中国風の陶器に変えたところ、培養鉢より鉢が小さくなったせいで、実が一回りも小さくなってしまった。
〈これはいけない植え替えなくては〉
 と慌てて盆栽屋さんに行って鉢を捜した。運よく大きさもスタイルも良い素敵な鉢が見つかった。それがこれだ。



 さて、20日間の退院も終わり、8日に4回目の治療のために入院した。昨日は家族全員が見舞いに来てくれたが、息子が踊躍歓喜(ゆやくかんぎ)の話を持って来てくれた。
 なんと、わたしが癌で入院している6月に息子に女の子が生まれたそうだ。余命短いわたしに、新しい縁者が誕生した。不思議な縁を感じたが、名前を文香(ふみか)と名づけたと聞いて、演劇一筋のわたしにはより一層の縁を感じた。
 わたしの娘が生まれた時に「がめつい奴」を上演していたので、明くる年の年賀状に、
「○○年に「がめつい奴」のテコを演じる○○です」
 と娘を紹介したが、実現しなかった。これが娘に対するわたしの唯一の汚点だが、娘は絵がうまく、芝居の読解力もあるので、今はあらすじを書いているところだが、それが終わったら上演台本にする「弘徽殿鵜羽産屋」の漫画を描いてもらいたい、と思っている。
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