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                                    2012年3月16日(金) 
                                    「こころの師」吉本隆明氏の死 
                                     
                                      
                                     
                                     30代の頃血清肝炎になり入院した。渋谷のある喫茶店の店長をしていて朝8時から夜中の2時まで働き体が弱っていたのが一つの要因だが、その時に、 
                                    「病気で静養中にじぶんの人生をもう一度考え直そう」 
                                     と、吉本隆明氏の書物をむさぼるようにして読んだ。あの時のわたしには、吉本隆明氏の書物しか頼るものはなかったからである。 
                                     吉本氏の名著の一つである『真贋』という書物の帯に、娘のよしもとばななさんがこんなことを書いている。 
                                     
                                    「現代を生きていてずっと胸につかえているもやもや、追い立てられているような不安、わけがわからず曖昧になっていたままのことの秘密が、この本の中に全部さらりと書いてあった」 
                                     
                                     吉本氏にわたしがのめりこんだのもこれである。 
                                     吉本氏の書物はまさに暗黒を光明に変える。 
                                     例えば、 『言語にとって美とはなにか』で〈韻律〉〈選択〉〈転換〉〈喩〉が言語の美を成立させていることや、鮮やかな演劇の定義づけ、そして「共同幻想論」での「自己幻想」「対幻想」「共同幻想」と観念の領域を独立させたことなど、わたしが演劇を生業として生きるためにどんなに役立ったか計り知れない。 
                                     森鴎外が言っているように、世の中には素晴らしい人はたくさんいても、心から頭をたれることのできる尊敬する師はなかなかみつからないものだが、わたしは幸運にも20代で吉本隆明という「こころの師」と出会うことができた。 
                                     吉本氏がいてくれてわたしはほんとうに幸せだった。 
                                     吉本氏にはもっともっと長生きして、世の中に警鐘を鳴らし続けてほしかった。 
                                     それがもうかなわないなんて、本当に寂しい。 
                                     心からご冥福をお祈りいたします。  | 
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