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●内面の気持ちを〈〉で表示 |
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わたしは演劇人だから演劇人なりに『源氏物語』の現代語訳で、ひとつの手法を思いついた。
それは作中人物の内面の気持ちを〈〉で示すということである。例えば、
内裏にいかに求めさせたまふらむを、 いづこに尋ぬらんと思しやりて、かつはあやしの心や、六条わたりにもいかに思ひ乱れたまふらん、恨みられんに苦しうことわりなりと、いとほしき筋はまづ思ひきこえたまふ。何心もなきさしむかひをあはれと思すままに、あまり心深く、見る人も苦しき御ありさまをすこし取り捨てばやと、
思ひくらべられたまひける。
という原文は次のように訳した。
(源氏の君は)
〈帝はどんなにじぶんを捜しておられることか、どこを捜しておられるのだろう?〉
と思われ、一方では
〈(こんな女に心を奪われるとは)じぶんながら不思議だ、六条の方もどんなに悩んでおられることか、恨まれるのは辛いけど 無理もない〉
と、気の毒がられ真っ先に思い出される。無心であどけなく座っている目の前の女を
〈可愛い〉
と思われると、
〈(六条の方の)あまりにも思慮深く、こっちが息苦しくなるような態度を少しでもしなくなったら(いいのに)〉
と、つい比較される。
原文にない言葉は()で示しているので、()や〈〉が多くて読みづらいだろうが、それさえ気にしなければ意味ははっきりわかると思う。
〈〉という手法を発見したことによって、確実に演劇化への一歩を踏み出したといえる。 |
三澤憲治 |
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