THE WORLD OF THE DRAMA 演劇の世界
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●歌舞伎 過剰なる記号の森
渡辺保
 日本人の演劇の基本は歌舞伎にある。
 日本を代表する演出家は、ほとんどが歌舞伎の恩恵を被っている。鈴木忠志しかり、蜷川幸雄しかり。かれらの芝居を観ると随所に歌舞伎の手法が使われていることがわかる。
 歌舞伎といえば勧進帳だ。
 勧進帳は、現代でいえば、なにもない空間で行われる、弁慶、富樫、義経の男三様の精神ドラマだ。舞台装置といい、登場人物といい、このシンプルさはまさしく演劇の手本といっていい。いや、ここには演劇のすべてが隠されているといっても過言ではない。
 この本は、歌舞伎に精通した著者が副題に「過剰なる記号の森」としているように、〈仁〉〈型〉〈花道〉〈ツケ打ち〉〈見染め〉などの歌舞伎用語から、その本質に迫り、様々な歌舞伎美学を掘り出している名著だ。
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