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「源氏物語」の女性に必ずやってくる〈あわれ〉の実態 |
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「源氏物語」の女性に必ずやってくる〈あわれ〉の実態 |
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右大臣殿(夕霧)は(兵部卿宮と六の君との婚儀を)急がれて、 「八月頃に」 と(兵部卿宮のほうに)おっしゃる。二条院の中の君は、(そのことを)聞かれると、 〈やはり、思っていた通りになった、数にも入らないわたしだから、 《きっと世間の物笑いになるような情けないことが起こるかもしれない》 と心配しながら今まで宮と暮らしてきた、浮気な方といつも聞いていたから、信頼できないと思いながらも、わたしには、格別思いやりがないこともなさらないし、やさしく心から愛を誓ってくださるだけだったから、(六の君と結婚して)急に態度がお変わりになったら、平静でいられるはずがない、(皇族だから)世間普通の夫婦のように、すっかり縁が切れてしまうことはないにしても、不安に思うことが多くなるだろう、やはり(わたしは)ほんとうに辛いことの多い身の上だから、結局は山里に戻ることになるだろう〉 と思われるが、 〈このまま山里に身を隠したとしても、山里の人たちが待ち受けていて (「結婚に失敗して帰ってきた」 と)物笑いにするだろう〉 と、父宮の遺言に背いて宇治を出てきてしまったのが、返す返すも(残念でならず)その軽率さを、恥ずかしくも情けなくも思われる。 〈お姉さまは、はっきりしたところがなく頼りなさそうにばかり何事もお考えになりおっしゃっていたが、心の底がしっかりしている点では、この上ない方だった、中納言の君が、いまだに忘れられずずっと悲しんでいらっしゃるようだが、もし(お姉さまが)生きていらっしゃったら、わたしと同じように悲しい思いをなさったかもしれない、それを(お姉さまは) 《けっしてそんな目には会わない》 と深く思いつめられて、なんとか(中納言の君から)離れようと思われて、尼になろうともされた、(生きていらっしゃったら)きっとそうなさっていたはず、今になって思うと、ほんとうに思慮深い方だった、父宮もお姉さまも、わたしを、あまりにも軽率な女とあの世からご覧になっているだろう〉 と、恥ずかしく悲しく思われるが、 〈今さらどうしようもないこと、こんな悲しみを(宮に)気づかれないようにしよう〉
とじっと我慢して、なにも聞かなかったふりをして過ごしていらっしゃる。 |
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