長くは続かない前世の定めだから寵愛した
「中の品」の女だから拒絶するしかない
愛着から憎悪に変貌する少女
源氏にとって藤壺と紫の上とには差異はない
受苦の人、紫の上の生命の凋落
喪服の大君と心に喪服をつけた薫との愛恋
平安の女が涙ながらに詠む返歌
自然の現象にじぶんの境遇を重ねる平安の女
「源氏物語」の女性に必ずやってくる〈あわれ〉の実態
自然の現象にじぶんの境遇を重ねる平安の女
 京への道のりが非常に遠く険しい山道の様子を(中の君は)ご覧になると、
〈薄情なお方〉  
 とばかり思っていた宮が稀にしか通ってこられなかったのを、
〈無理もない〉  
 と少しは納得される。明るく輝きだした(二月)七日の月が美しく霞んでいるのをご覧になりながら、こんなに遠い道のりは、はじめてなので苦しく、物思いにふけって、

ながむれば 山より出でて 行(ゆ)く月も 世にすみわびて 山にこそ入れ
(ぼんやり空を見れば 山からのぼってゆく月も この世に住むのが辛くなって 再び山に入ってゆく)

〈(京へ行っても見捨てられて)境遇が変わり(また宇治へ戻ってくるかもしれない)、最後にはどうなるのだろう〉  
 と そればかりが心から離れず、行く末が不安なので、
〈(今の悩みに比べたら)今までの悩みなんてたいしたことではなかった〉  
 と昔のじぶんに戻りたい気がなさる。
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